「うちのチームは、会議をしても同調圧力ばかりで本音が出ない……」
「若手とベテランの溝が埋まらず、結局自分がすべて決めるしかない……」
50代になり、会社で部長や役員といった重責を担う方、あるいは長年培った経験を武器に起業したばかりの経営者の方にとって、最も頭を悩ませるのは「人の動かし方」ではないでしょうか。
1400年前、日本という「未完のベンチャー国家」の舵取りを任された聖徳太子も、実はあなたと全く同じ悩みを抱えていました。彼が残した「十七条憲法」は、単なる道徳の教科書ではありません。それは、利害関係が複雑に絡み合う組織を一つにまとめ、爆発的な推進力を生むための「超実戦的マネジメント・マニュアル」なのです。
今回は、聖徳太子の教えを現代のビジネス用語に翻訳し、今日からあなたのチームで使える知恵としてお届けします。
1. 【第一条】「和」とは「仲良し」ではなく「健全な衝突」である
日本人が最も誤解している言葉、それが第一条の「和をもって貴しとなす(わをもってとうとしとなす)」です。
多くの職場で、これは「波風を立てるな」「空気を読め」というニュアンスで使われています。しかし、太子の真意は真逆です。この条文には続きがあります。
「人皆党(たむろ)あり……」
(人は皆、派閥を作りたがるし、偏見を持っているものだ)
太子は、人間は放っておけば自分の利権や派閥(部署の利益)に固執することを見抜いていました。その上で、「だからこそ、私情を捨てて、徹底的に議論を尽くせ」と説いているのです。
現代のビジネスへの転用:
- 「ぬるま湯の和」を捨てる: 意見が対立しない会議は、誰も真剣に考えていない証拠です。
- 共通のゴール(パーパス)を再定義する: 派閥争いを止めるには、全員が合意できる「高い視座の目標」をリーダーが提示し続ける必要があります。
2. 【第十条】アンガーマネジメントと「心理的安全性」の元祖
50代のリーダーが陥りがちな罠が、部下への「無意識の威圧」や「感情的な反発」です。太子は第十条で、驚くほど現代的な「アンガーマネジメント」の重要性を説いています。
「こころの怒りを絶ち、おもての怒りを棄てて、人の違うを怒らざれ」
(自分の心の中のイライラを抑え、顔に出る怒りも捨てなさい。自分と意見が違うからといって怒ってはならない)
その理由は、「自分だって間違えることがあるから」。
現代のビジネスへの転用:
- 「正しさ」を武器にしない: 「俺の若い頃は……」と自分の正解を押し付けた瞬間、組織の学習は止まります。
- 「違和感」を歓迎する: 自分と違う意見を「攻撃」ではなく「新しい視点」として受け入れる度量が、今の複雑なマーケットには不可欠です。
3. 【第十七条】意思決定の「透明性」が組織の毒を消す
最後の条文である第十七条は、まさに意思決定のフレームワークです。
「大事は独り断ずべからず。必ず衆とともに論ずべし」
(重要な案件を、リーダー一人の独断で決めてはならない。必ずみんなで議論しなさい)
ワンマン経営やトップダウンの限界を、太子は1400年前に予見していました。特に50代で新しいプロジェクトを始める際、自分の経験則だけで決断すると、現代の速い変化を見誤るリスクがあります。
現代のビジネスへの転用:
- 分散型リーダーシップ: 重要な決断ほど、あえて現場の若手や外部の視点を取り入れる「仕組み」を作ること。
- 「納得感」の醸成: 議論のプロセスを公開し、参加意識を持たせることで、実行段階でのスピードが圧倒的に変わります。
4. なぜ「50代のあなた」に聖徳太子が必要なのか
聖徳太子は、30代から40代にかけて最も激しく働き、50歳でこの世を去りました。当時の50歳は、今の感覚で言えば「人生の完成期」です。
彼は、自分の代で日本を完成させようとは思いませんでした。「自分が去った後も、組織が自律的に動き、成長し続けるためのOS(=憲法)」を作ったのです。
あなたが今、会社で後進を育てている、あるいは新しい事業を立ち上げようとしているなら、それは「自分が活躍するため」だけではないはずです。
「自分が去った後に何を残すか(レガシー)」。この視座を持つとき、聖徳太子の孤独な戦いと、彼が斑鳩の地に込めた願いが、深く胸に響くはずです。
5. 聖徳太子の「設計思想」に触れる旅:奈良・斑鳩への招待状
太子のマネジメント思想は、机の上だけで理解するものではありません。彼が実際に暮らし、思索にふけった斑鳩(いかるが)の土地には、現代の喧騒を忘れさせ、リーダーとしての自分をリセットしてくれる「静寂」があります。
訪れるべき場所
① 法隆寺(西院伽藍と大宝蔵院)
世界最古の木造建築群を目の当たりにしてください。1400年経っても崩れない構造は、まさに太子の「持続可能な組織作り」の象徴です。
- ビジネスパーソンへのヒント: 建物だけでなく、そこに配置された仏像の表情を見てください。どれも「優しさ」と「厳しさ」を併せ持っています。
② 夢殿(ゆめどの)
太子が瞑想し、神の啓示を受けたとされる八角形の堂です。
- ビジネスパーソンへのヒント: 行き詰まったとき、太子もここで「一人になる時間」を大切にしました。リーダーにこそ、孤独を味方につける時間が必要です。
③ 中宮寺の「菩薩半跏思惟像」
「考える人の最高傑作」とも称されるこの像の前に座り、15分間、何も考えずに眺めてみてください。
- ビジネスパーソンへのヒント: 太子が理想とした「慈悲(深い共感)」と「知恵」の両立が、その微笑みに隠されています。
6. 斑鳩へのアクセスガイド(電車・車)
電車で訪れる:静かに思考を深めるルート
- JR「法隆寺駅」が玄関口です。
- 大阪(天王寺駅)から大和路快速で約25分。
- 駅から法隆寺までは徒歩約20分。この道中、周囲の古い町並みや松並木を歩くことで、日常のストレスから意識が切り替わっていきます。
車で訪れる:多忙なあなたのための効率ルート
- 西名阪自動車道「法隆寺IC」を下りて、北へ約5分。
- 周辺には複数の有料駐車場があります。「法隆寺観光自動車駐車場」が最も大きく、アクセスもスムーズです。
- ※早朝8時台に到着すると、観光客が少なく、寺院の「神聖な空気」を独り占めできます。
7. まとめ:50代の「後半戦」を戦うための智慧
聖徳太子の人生を辿ると、彼は常に「理想」と「厳しい現実」の板挟みにあっていました。
しかし、彼は諦めなかった。
「人はバラバラである」という冷徹な現実を認めた上で、「だからこそ言葉を尽くし、仕組み(憲法)を作り、対話をやめない」という道を選びました。
もしあなたが今、組織や新しい挑戦で壁にぶつかっているなら、それはあなたが「真剣にチームを、そして社会を良くしようとしている」証拠です。
1400年前の経営者、聖徳太子。彼の残した「和」の真意を胸に、明日からのマネジメントを変えてみませんか?
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